T.C型肝炎ウイルス (HCV)

C型肝炎ウイルス(HCV)は1989年に遺伝子工学的に発見されたRNAウイルス(Choo QL, et al. Isolation of a cDNA clone derived from a blood-borne non-A, non-B viral hepatitis genome. Science 244:359-362,1989)で,従来非A非B型肝炎として分類されていた肝炎のほとんどがC型肝炎であることが判明しました.国内には約200万人の保有者がいると推定されます.2002年4月1日より老人保健法に基づく健康診断ではC型肝炎ウイルスの検査は無料となりました.

HCV RNA

約3000のアミノ酸からなり,5'末端側には非翻訳領域と構造遺伝子(C:コア蛋白,E1&e2/NS1:エンベロープ蛋白)が存在します.3'末端側には非構造蛋白(NS:nonstructural)が存在します.なお,HCVは遺伝子型により 以下のように分類されています(Hepatology 21:570,1995).日本人におけるHCVの割合は1b型(インターフェロンの感受性が低い)が多くを占めます.

C型肝炎ウイルス(HCV)の分類

Genotype(遺伝子型) Mori/Okamoto Serotype(血清型) インターフェロン感受性
1a I Group1
1b II Group1
2a III Group2
2b IV Group2
3a V - -
3b VI - -

家庭内におけるHCV感染率は7.3%(配偶者15.6%,その他の家族3.2%)(J Viral Hepat 5:67,1998),周産期の感染率は0-15%(Curr Stud Hematol Blood transfus 62:208,1998)と報告されていますが,授乳による感染は立証されていません.なお,針刺し事故におけるHCV感染率は3-10% と報告されています(Arch Intern Med 153:1525,1993).

 

U.C型肝炎ウイルスの検査

抗体検査

HCV抗体検査

 第1世代

NS-4領域のC100-3に対する抗体を認識する方法です. 自己免疫性肝炎で偽陽性となったり,感染から1-3カ月経過しないと陽性にならないため急性期の診断が困難であるなどの問題点がありました.

 第2世代

コア 蛋白領域(C22-3),NS3領域(C33c)を導入することにより,より早期にかつ正確に診断することが可能となりました.

EIA法

RIA法

RIBAテスト

 第3世代

NS5領域の一部を抗原として用い,さらに迅速な検出が可能となりました.

HCV RNA検査

DNAプローブ法(Meq/ml)

血清から抽出したHCV RNAを相補的な配列を持つ合性DNAプローブで補足し,化学発光により検出します.

 HCV RNA(5'NCR法)

抽出したHCV RNAを,5'NCR(5' non-coding region)を用いたRT-semi-nesdted PCRにより,半定量的に測定します.

 HCV RNA 定性(RT-PCR法)

抽出したHCV RNAを,5'末端をビオチン化したプライマーを用いたRT-PCRで検出します.

 HCV RNA 定量(RT-PCR法:アンプリコア kcopy/ml)

抽出したHCV RNAを,5'末端をビオチン化したプライマーを用いたRT-PCRを施行後,相補的な配列を持つ合性DNAプローブで補足し,酵素発色により検出します.

 HCV RNA 定量(アンプリコアHCVモニター法)

 HCV RNA 定量(オリジナルPCR法)

 HCV RNA 定量(ハイレンジPCR法)

 HCV RNAジェノタイプ

Okamotoの分類のI型が1aに,U型が1bに,V型が2aに,W型が2bに相当します.

 HCV RNAセロタイプ

セロタイプのgroup1がサブタイプのI型とU型に,group2がV型とW型に相当します.

 HCV RNA 超可変領域(HCV-HVR1)

HCV RNAの塩基配列に高度に変異をきたしやすい部位で,持続感染やインターフェロン治療に関連していると考えられています.

HCV RNA 測定法

測定法

検出感度

DNAプローブ法

0.5 -120 Meq/ml

HCV抗原

20 - 400000 fmol/l

アンプリコア 定性法

>50 IU/ml

アンプリコア モニター法

05 - 850 KIU/ml

オリジナルPCR法

05 - 500 KIU/ml

ハイレンジPCR法

5 - 5000 KIU/ml

CRT-PCR法

>100 copies/ml

RT-PCR法

 1.2 - 7.7 Log IU/ml

高ウイルス量:≧1 Meq/ml,≧100 KIU/ml,≧300 fmol/l

 

換算

従来法(KIU/ml)

RT-PCR法(Log IU/ml)

1 3
10 4

50

4.7

100

5.0

250

5.4

500

5.7

750

5.9

1000

6.0

5000

 6.7

10000

7.0

 

 

V.C型肝炎の症状

肝外病変

混合性クリオグロブリン血症

晩発性皮膚ポルフィリン症

糸球体腎炎

膜性増殖性糸球体腎炎

メサンギウム増殖性糸球体腎炎

悪性リンパ腫

HCVは肝以外に末梢血リンパ球にも感染すること(Blood 83:269,1994), 悪性リンパ腫ではHCV感染率が高いこと(Blood 87:4296,1996)より,リンパ腫発生とHCVの関連が示唆されています.

自己免疫性疾患

自己免疫性血小板減少症,自己免疫性甲状腺,Sjogren症候群

蕁麻疹

C型慢性肝炎では免疫複合体に起因する蕁麻疹の発症が示唆されています(Mayo Clin Proc 70:559,1995).

眼疾患

蚕食性角膜潰瘍,ぶどう膜炎,強膜炎

 

W.C型肝炎の予後

HCVが自然にいなくなる確率は非常に低いと考えられます(J Hepatol 31:394,1999)が,自然に消失する機序としてキラー免疫細胞の抑制に関与している遺伝子が要因となっている可能性が報告されています(Science 305:872,2004).また,C型肝炎ウイルスが存在するにもかかわらず肝機能が正常な方がいます(HCVキャリア).HCVキャリアに対するインターフェロンインターフェロン療法は効果がないのみか,かえって肝機能を悪化させるとの報告(Hepatology 27:853,1998)がありますが,肝機能がほぼ正常の症例でも65%のウイルス消失がみられることより,積極的に治療を試みるべきとの報告(J Hepatol 23:503,1995)もみられます.また,インターフェロンとリバビリンの併用療法はALTの異常の有無に関係なく,同等の効果を示すとの報告(Gut 52:1644,2003)もあります.

年齢

高齢になると急速に病気が進展します(Lancet 249:825,1997)が,その原因ははっきりしていません.肝移植後の肝繊維化進行度もドナーの年齢に関係するとされています(Gut 54:248,2002).

性差

男性では女性に比して肝硬変への進行が早いとされています(Hepatology 54:1127,2011)が,女性ホルモンの影響が考えられています(Hepatology 29:719,1999).

人種差

人種によってHCV感染率が異なることが報告されています(Ann Int Med 144:705,2006)が,IL28Bの遺伝子多型が関与している可能性も考えられます(NAJ Med Sci 7:1,2014).

代謝性因子

インスリン抵抗性が肝繊維化を進行させると報告されています(Gastroentelol 125:1695,2003).また,鉄過剰状態では肝繊維化進行度が速いとされています(J Hapatol 36:687,2002).

重複感染

HBV(Gastroentelol 127:556,2004),HIV(Hepatology 30:1054,1999)との重複感染により病期の進行が促進すると考えられています.

嗜好品

飲酒(Hepatology 39:826,2004),喫煙(Gut 52:126,2003)は肝硬変への進展を促進させると考えられています.逆に,1日3杯以上のコーヒーは,肝病変の進展を抑制する可能性が示されています(Hepatology 50:136,2009).

 

X.C型肝炎の治療

C型急性肝炎

対症療法が行なわれますが,インターフェロン治療が奏効したとの報告もあります.急性肝炎診断8週の時点でインターフェロン(INF α 600万単位)を4週間連日投与した場合15例中13例(87%)に持続的なウイルスの消失を認め,ウイルスが消失しなかった残り2例でも,さらにインターフェロン(INF α 600万単位)を週3回24週間投与することにより,全例でウイルスの消失が認められたと報告されています( Hepatology 39:1213,2004).メタアナリシスの検討でも発症後12週以内に治療を施行した場合,最高90%のウイルス消失率が報告されています(J Hepatol Dec: 39:1056,2003).

C型慢性肝炎

インターフェロン

C型肝炎ウイルスを排除する目的でインターフェロン治療が行なわれます.従来は,インターフェロンαでは2〜4週間連日投与後週3回間歇投与計6カ月の投与が,インターフェロンβでは6〜8週間連日の短期投与が行なわれていましたが,2002年3月よりこれまでの投与期間6カ月の制限が撤廃され長期間の投与が可能となりました.インターフェロン治療によりウイルスが消失 した場合(Ann Int Med 132:517,2000),または消失しない場合でもGPTを正常に維持するようにインターフェロンを継続した場合 には線維化が改善または抑制されると報告されています(J Hepatology 35:272,2001).

インターフェロンの種類

一般名 開発番号 製品名 販売会社 用量
nINF α INF αHLBI スミフェロン 大日本住友 1日1回300-900万IU
nINF α OIF 大塚 1日1回500-1000万IU
nINF α MOR-22 INFαモチダ 持田 1日1回500-1000万IU
rINF α-2a rINF α2a キャンフェロンA 武田 1日1回300-900万IU
rINF α-2a Ro22-8181 ロフェロンA 日本ロシュ 1日1回300-900万IU
PEG-INF α-2a Ro25-8310 ペガシス 中外 1週1回1800万IU
rINF α-2b Sch30500 イントロンA シェリング 1日1回600-1000万IU
PEG-INF α-2b    ペグイントロンA シェリング 1週1回1.5μg/kg
INF Alfacon-1 CIFN アドバフェロン アステラス 1日1回1200-1800万IU
nINF β HFIF フェロン 第一三共 1日1回300-600万IU
nINF β MR-21 INFβモチダ 持田 1日1回300-600万IU

genotype1b,HCVRNA>10Meq/mlの症例は難治症例と考えられます.このような症例に対して種々のインターフェロン投与法が考案されています.

難治例に対するインターフェロン投与法

投与法 HCVRNA陰性化率 文献
β(1日2回)連日×4週+α2b/連日×2週+α2b/3/週×12週 75% 肝臓38:11,1997
β(1日2回)連日×4週+α2b/3/週×12週 15.8% 肝臓21:445,2000

 
特殊な投与法として,難治性である1b型(HCV RNA量が1Meq/ml以上)の症例に対してインターフェロンを2段階投与(初回インターフェロン投与後に減少したHCVRNA量が増加し,その後急速に再度減少する時期にインターフェロンを再投与する)することによりHCVRNAの陰性化率が改善されるという報告があります(肝臓 7:396,2000).

インターフェロンアルファコン(コンセンサスインターフェロン)

インターフェロンαのアミノ酸配列のうち最もみられるアミノ酸配列を選択して作られた166個のアミノ酸からなる組換え型インターフェロンです.

2001年12月に保険が適応されました.従来の組換え型インターフェロンに比べて副作用が少なく,HCV-RNA量が100-750Kcopies/mlの高ウイルス血症症例に対しても効果が期待されるといわれています.

ペグインターフェロン(pegylated INF)

インターフェロンの作用時間を長くするためポリエチレングリコールで被ったインターフェロンが開発されています.ぺグインターフェロンと呼ばれ慢性肝炎(New Engl J Med 343:1666,2000)および肝硬変(New Engl J Med 343:1673,2000)のいずれに対しても従来のインターフェロン治療に比べて明らかに効果が勝っていると考えられますが,週1回の投与でよいという点が優れています.pegylated INF α2aの投与量は180μgが適量とされ(Hepatology 33:433,2001),pegylated INF α2bは1.5μg/kgの投与量が設定されています.日本では2003年12月よりpegylated INF α2a に対して保険適応が認められました.

インターフェロンの副作用

インターフェロンの副作用

  副作用 症状 特徴
初期

(1-2週)

風邪症状 発熱,全身倦怠感 ほとんど必発.数日-数週間で軽快
消化器症状 食欲不振,悪心,下痢,腹痛 頻度が高い
神経・筋症状 頭痛,関節痛,筋肉痛,神経痛 頻度が高い
腎症状 蛋白尿 INF βに多い
血液症状 白血球減少,血小板減少 頻度が高い
皮膚症状 掻痒感,発疹   
精神症状 不眠   
中期

(3週-3カ月)

消化器症状 食欲不振,悪心,下痢   
神経・筋症状 関節痛 自己免疫疾患(慢性関節リウマチ)発症
精神症状 うつ病   
呼吸器症状 息切れ 間質性肺炎が有名
循環器症状 不整脈,胸痛   
代謝・内分泌症状 口渇,動悸,浮腫 糖尿病,甲状腺の異常
眼症状 視力障害
後期

(3カ月-)

血液症状 貧血   
その他 脱毛 INF αに多い

インターフェロン併用療法

ケトプロフェン

日本では1992年に活動性C型慢性肝炎に対してインターフェロン治療が認められました.インターフェロン(INF α2b)単独使用群と ケトプロフェン併用群との比較では,治療6カ月 のHCV RNAの消失率は併用群で26%,単独群で5%と,併用群で高い消失率が認められています(Gut 46:427,2000).ケトプロフェンにより発熱等のインターフェロンの副作用の発現も抑えられるので試みられて良い治療法かもしれません.

アマンタジン

インターフェロン無効例に対してインターフェロン,リバビリン,アマンタジンの3剤併用療法が,インターフェロンとリバビリンの2剤併用療法に比べて,HCVRNAの消失率が優れていた(48% vs 5%)と報告されました(Hepatology 32:630,2000) が,インターフェロン単独とアマンタジン併用療法との比較では,治療終了24週でのHCV-RNA陰性化率が20.7%vs13.6%(P=0.175)と有意差は認めず,アマンタジンの併用効果は疑問視されています(Hepatology 35:447,2002).

リバビリン

インターフェロンにウイルスの複製を阻害すると考えられるリバビリンを併用し良い結果が報告されています.1b型HCV RNAによる慢性肝炎例でのインターフェロン(INF α2b)単独使用群とリバビリン併用群との比較では,治療6カ月後のHCV RNAの消失率は併用群で32.8%,単独群で14.1%と,併用群で高い消失率が認められています(Hepatology 31:1338,2000).また,インターフェロン(INF α2b)とリバビリン併用群では,線維化の進行率を低下させるとの報告もあります(N Engl J Med 343:1673,2000).一方,初回のインターフェロンで効果がなかったgenotype1の10症例にリバビリンを併用したインターフェロン(INF α2B)の再投与を施行したところ持続した効果がみられた症例はいなかったとの報告(Dig Dis Sci 45:685,2000)や,インターフェロン(INF α2b)の再投与による持続効果はリバビリンの併用の有無とは関係がなかった(HCV RNAの消失率:リバビリン併用群7% vs リバビリン非併用群7%)との報告(J Viral Hepat 7:75,2000)もありますが,再発症例における併用療法の有用性も報告されています(HCV RNAの消失率;リバビリン併用群30% vsリバビリン非併用群5%)(Am J Med 107:112,1999).本邦でも2001年11月21日にレベトールカプセル(シェリング・プラウ社)として輸入承認が下り,12月7日に発売となりました.遺伝子1型のC型肝炎ウイルスに対するペグインターフェロンとの併用では従来のインターフェロンとの併用に比べてHCV RNA消失により効果があると報告され(33% vs 42%)(Lancet 358:958,2001),2004年12月8日にペグインターフェロンとの併用が認可されました.また,治療開始後の12週時点でHCV RNAが開始前の1/100量以下に減少しない症例(N Eng J Med 347:975,2002)および治療後24週以後にHCV RNAが陰性化した症例では著効率が低く,治療に対する初期の反応性が重視されています.2007年3月16日には,中外製薬より2番目のリバビリンとしてコペガスが薬価収載されました .

NS3/4A阻害剤(プロテアーゼ阻害剤)

NS3に存在する,ウイルスの増殖に必要なプロテアーゼ活性を抑制することにより,抗ウイルス作用を発揮します.Telaprevir の有用性が認められ(N Eng J Med 364:2405,2011),国内では平成23年11月28日より販売が開始され,平成23年12月26日よりペグインターフェロンとリバビリンとの3剤併用療法が医療費助成の対象となりました. 平成25年12月6日より第二世代のSimeprevirが,12月24日にはVaniprevirが販売されましたが,食事の影響を受けず,皮膚障害や貧血等の副作用も少ないことより,安全性と治療効果が向上しています.平成26年9月よりAsunaprevirがDaclatasvirとの併用によるインターフェロンフリー治療が可能となりましたが,NS3/4A領域168番目のアミノ酸変異(D168A/E/V)による薬剤耐性が報告されています.

NS5A阻害剤(複製複合体阻害剤)

NS5A複製複合体阻害薬であるDaclatasvirは,NS3プロテアーゼ阻害薬であるAsunaprevirとの併用により,24週投与後のウイルス学的著効達成率が未治療症例で87.4%,INF無効症例で80.5%と良好な成績が得られています (Hepatology 59:2083,2014).DaclatasvirではNS5A領域31番目と91番目のアミノ酸変異(L31M/V,Y93H)による薬剤耐性が報告されています.OmbitasvirはNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤であるParitaprevirとプロテアーゼ阻害薬であるRitonavirとの3剤合剤として使用されています.

NS5B阻害剤(ポリメラーゼ阻害剤)

HCVの複製に関与するNS5Bの阻害剤であるSofosbuviは,NS5A阻害剤 であるLedipasvirとの併用により,難治性であるgenotype 1に対して,24週後にはウイルス消失率が98%と良好な成績が報告されています(N Engl J Med 370:1889,2014).また,genotype 2では,Sofosbuviとリバビリン との12週間併用により,100%のウイルス消失が報告されています(N Engl J Med 368:1867,2013).

サイクロフィリン阻害剤

サイクロフィリン阻害剤によりインターフェロン誘導遺伝子に対する負の調節が解除され,抗HCV獲得免疫反応を誘導・維持する可能性が示唆されています.

DAA治療

ダクルインザ+スンベプラ(Daclatasvir+Asunaprevir)

NS5A複製複合体阻害薬剤とNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤の組み合わせで,最初に認可されたDAAです.NS5Aの31番目または93番目のアミノ酸変異に伴い,効果が半減することが弱点となっています.

ハーボニー配合錠(Sofosbuvir+Ledipasvir)

不整脈治療薬アミオダロンを併用すると徐脈などの不整脈があらわれることがある点に注意が必要です. 腎排泄であるため,eGFR30ml/min/1.73m2以下は禁忌となっています.

ヴィキラックス配合錠(Ombitasvir+Paritaprevir+Ritonavir

NS5A阻害剤+NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤+プロテアーゼ阻害薬の合剤です.オムビタスビルにリトナビルを併用することで,C型肝炎に対する高い奏効率が(1a:奏効率95.3%,1b:奏効率98.0%)報告されています(N Engl J Med 370:1594,2014).NS5Aの93番目のアミノ酸変異に伴い,SVR率が80%に低下するとことと,Ca拮抗薬との併用が禁忌であることが弱点です.また,肝硬変患者に対する肝機能障害のリスクが高まる可能性がある点に注意が必要です.

ソバルディ+レベトール/コペガス(Sofosbuvir+Ribavirin)

GenotypeII型に対して,SofosbuvirとRibavirinの併用療法が認められています.

エレルサ+レグラジナ(Elbasvir+Grazoprevir)

GenotypeI型 慢性肝炎とC型代償性肝硬変に対して,NS5A阻害剤+NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤の併用療法が認められています.

INFフリーDAA治療一覧表

Genotype 製品名 一般名 作用機序 治療期間 SVR率
I ダクルインザ Daclatasvir NS5A 24週

85%

野生株:90-95%

スンベプラ Asunaprevir NS3/4A
ハーボニー Sofosbuvir NS5B 12週 96-100%
 Ledipasvir NS5A
ヴィキラックス Ombitasvir NS5A 12週

95%

野生株:99%

Paritaprevir NS3/4A
Ritonavir Paritaprevir増強
エレルサ Elbasvir NS5A 12週
グラジナ Grazoprevir NS3/4A
II ソバルディ Sofosbuvir NS5B 12週

95%

レベトール/コペガス Ribavirin 増強

 

その他の治療

グリチルリチン

C型慢性肝炎に対して週6回投与することにより47%にGPTの改善がみられています(Am J Gastroenterol 96:2432,2001).また,強力ミノファーゲンCの長期投与により肝細胞癌の発生の低下が報告されています(15年後の肝細胞癌の発生率:投与群 vs 非投与群;12% vs 25%)(Cancer 79:1494,1997).

瀉血療法

インターフェロン治療に瀉血療法を併用することによりウイルス学的および組織学的に有効であったという報告(Hepatology 31:730,2000)や,インターフェロン治療に反応しなかった症例に瀉血療法を施行したところ9%の症例にトランスアミナーゼの正常化をみた(Hepatology 32:135,2000)との報告があります.血清フェリチン値が 10ng/ml 以下になるように,2-4週ごとに200-400ml瀉血します.2006年より保険適応となりました.

小柴胡湯

UDCA

作用機序は疎水性胆汁酸を親水性のUDCAに置換することにより肝細胞の障害を防止すると考えられています.

BDD(Biphenyl Dimethyl Dicarboxylate)

中国で開発されたウイルス性肝炎の治療薬です.チョウセンゴミシより抽出されたBiphenylDimethylDicarboxylateが有効成分と考えられています.

ラクトフェリン

乳汁に含まれるラクトフェリンはC型肝炎ウイルスの表面に結合することにより(J Viol 71:5997,1997),ウイルスの肝細胞への付着を阻害すると考えられています.現在臨床試験が進行中であり,近い将来その有効性が明らかになると思われます.

  レニン・アンジオテンシン系阻害薬

作用機序は疎水性胆汁酸を親水性のUDCAに置換することにより肝細胞の障害を

C型慢性肝炎治療ガイドライン(日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会)

 

C型慢性肝炎治療 (第4.1版 2015年12月)

SOF:Sofosbuvir / LDV:Ledipasvir / OBV:Ombitasvir / PTV:Paritaprevir / r:Ritonavir

DCV:Daclatasvir / ASV:Asunaprevir / SMV:Simeprevir / VAN:Vaniprevir / RBV:Ribavirin

C型代償性肝硬変治療 (第4.1版 2015年12月)

SOF:Sofosbuvir / LDV:Ledipasvir / OBV:Ombitasvir / PTV:Paritaprevir

r:Ritonavir / RBV:Ribavirin

薬剤減量基準

貧血に対する薬剤減量基準

リバビリンを減量

   Hb リバビリン インターフェオン
 10 g/dl 未満 600 mg/日 → 400mg/日 変更なし
800 mg/日 → 600mg/日
1000 mg/日 → 600mg/日
 8.5 g/dl 未満 中止 中止

白血球,血小板減少に対する薬剤減量基準

インターフェロンを減量

  リバビリン インターフェオン
好中球 750/μL 未満 変更なし 減量
好中球 500/μL 未満 中止 中止
 血小板 50,000/μL 未満 中止 中止

インターフェロン治療の効果判定

ウイルス学的効果

ウイルス学的効果判定

   治療終了時 治療終了24週後
著効 sustained virological response HCV RNA (-) HCV RNA (-)
再燃 relapse HCV RNA (-) HCV RNA (+)
無効 non-response HCV RNA (+) HCV RNA (+)

ウイルス学的効果判定時期

rapid virological response (RVR) 4週後
early virological relapse (EVR) 12週後
end of treatment response (ETR) 治療終了時
sustained virological responce (SVR) 治療終了24週後

 

生化学的効果

生化学的効果判定

   治療終了24週以上
sustained biochemical complete response ALT正常 HCV RNA (-)
incomplete response ALT正常 HCV RNA (+)

C型慢性肝炎の治療効果にかかわる因子

宿主因子

年齢

肝線維化

IL28B

19番染色体のIL28B遺伝子近傍の遺伝子多型が同定され,マイナーアリル(TG or GG)を持つ群は,メジャーアリル(TT)をもつ群に比べ,インターフェロンの治療効果が低いとされています(Nat Genet 41:1105,2009).

ウイルス因子

ISDR(Interferon Sensitivity Determining Region)

HCVのNS5Aに存在する遺伝子領域(2209-2248)で,アミノ酸変異数とインターフェロン治療効果が関連すると報告され ています(N Engl J Med 334:77,1996).

HCV core 領域の70 番/91 番のアミノ酸変異

コア70番と91番の変異型は治療抵抗性であることが報告されています(J Hepatol46:403,2007).

  C型慢性肝疾患治療の進歩

1989年にC型肝炎ウイルスを遺伝子工学的に発見

1992年よりインターフェロン治療の開始

2014年よりDAA治療(インターフェロンフリー治療)の開始

DAAと作用部位

NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤

NS5A阻害剤

NS5Bポリメラーゼ阻害剤

Telaprevir    
Simeprevir    
Vaniprevir    
Asunaprevir Daclatasvir  
  Ledipasvir Sofosbuvir
Paritaprevir Ombitasvir  
Grazoprevir Elbasvir  
Glecaprevir Pibrentasvir  

ゲノタイプとDAA剤

ウイルスのタイプ

DAA

1型

ダクルインザ+スンベプラ(Daclatasvir+Asunaprevir)

ハーボニー配合錠(Sofosbuvir+ Ledipasvir)

ヴィキラックス配合錠(Ombitasvir+Paritaprevir+Ritonavir

エレルサ+グラジナ(Elbasvir+Grazoprevir)

2型

ソバルディ+レベトール/コペガス(Sofosbuvi+ Ribavirin)

1型 / 2型 マヴィレット配合錠(Glecaprevir+Pibrentasvir )

 

抗ウイルス療法の変遷

抗ウイルス療法の変遷

適応年

治療法 適応疾患

治療期間

1992年 INF α,β 慢性肝炎 24週
2001年 RBV/INF α2b 慢性肝炎 24週
2003年 PEG-INF α2a 慢性肝炎 48週
2004年 RBV/PEG-INF α2b 1型慢性肝炎 48週
2006年 INF β 肝硬変  
2007年 RBV/PEG-INF α2b 1型慢性肝炎 48週
2008年 INF α 肝硬変  
2009年 RBV/PEG-INF α 慢性肝炎 72週
2011年 RBV/PEG-INF α 肝硬変  
2011年 TVR/RBV/PEG-INF 1型慢性肝炎 24週
2013年 SMV/RBV/PEG-INF 1型慢性肝炎 24-48週
2014年 DCV/ASV 1型慢性肝炎/肝硬変 24週
2014年 TVR/RBV/PEG-INF 2型慢性肝炎 24週
2014年 VAN/RBV/PEG-INF 1型慢性肝炎 24週
2015年 RBV/PEG-INF α2b 2型慢性肝炎 24週
2015年 SOF/RBV 2型慢性肝炎/肝硬変 12週
2015年 SOF/LDV 1型慢性肝炎/肝硬変 12週
2015年 OBV/PTV/Ritonavir 1型慢性肝炎/肝硬変 12週
2016年 OBV/PTV/Ritonavir/RBV 2型慢性肝炎/肝硬変 16週
2016年 EBR/GZR 1型慢性肝炎/肝硬変 12週
2017年 GLE/PIB 慢性肝炎/肝硬変 8週/12週