I.A型肝炎ウイルス

Feinstoneによって発見されたウイルスです(Hepatitis A : detection by immuneelectron microscope of a virus-like antigen associated with acute illness. Science 182 : 1026-1029,1973).Picornavirus科に属するRNAウイルスです.A型肝炎はA型肝炎ウイルスが経口的に感染することにより発症し,特に生カキによる感染が高頻度にみられます.潜伏期は約1カ月で,他の急性肝炎に比べて,発症が急激で発熱,脾腫,炎症所見を認める(CRP陽性)ことが特徴的ですが,経過は良好です.IgM型A型肝炎ウイルス抗体が陽性となることより診断可能です.なお,A型肝炎は終生免疫なので再発することはありません.

1型から7型までの7種類の遺伝子型に分類され,日本ではほとんどが1A型で,一部が1B型と3B型に分類されています.

 

II.A型肝炎の予防

A型肝炎ウイルスは経口的に感染するので流行地での生水,生物の摂取に注意が必要です.なお,A型肝炎が流行している海外(東南アジア等)への旅行の際はA型肝炎ワクチンにより感染の予防が可能です.

A型肝炎流行地

 

A型肝炎ワクチン

薬品名 販売会社 用量
エイムゲン アステラス製薬 1A 0.65μg

注射用水0.65mlで溶解し,初回と2〜4週後,さらに24週後に0.5mlずつ3回投与します(筋注または皮下注). 従来は主に成人に接種されてきましたが,2013年3月より16歳未満への小児へも適応拡大され,1歳以上の小児への接種が推奨されるようになりました.HA流行国への旅行者は出国4週間前までに3回のワクチン接種を済ませておくことが理想的ですが,2回接種でも,2年程度の感染防御が期待できます.なお,他の生ワクチンの接種を受けた場合は4週間以上,他の不活化ワクチンの接種を受けた場合は1週間以上の間隔をあけて接種することが望ましいとされています.